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GODの館ver.3

GODの館ver.3

(51~60)

第五十一話  麻田先輩

渡部「曲がり型ってかなりマニアックだな」
坂井「そうだよ、そこが実際問題なんだよ」
安部「このコースでいうと芝田のチャリ系統はあっていない。平地・上り・下りではない異質型は言ってしまえば攻めれる場所がかなり限定されてしまう可能性が高いチャリ系統なんだよ」
鈴木「ええ?じゃあやばくない?」
渡部「まぁ元は平地型だったんだろ。十分このコースでも戦えるでしょ」
坂井「いや~平地型って言っても・・・そこまで」
渡部「え・・?」
鈴木「ていうかチャリ系統って変わるもんなの?」
安部「変わるよ。まぁ全員が変わるもんじゃない。平地型から上り型になりたくても絶対なれるもんでもない。例えるなら右利きから左利きに変わるぐらい大変だ。でも芝田に関していえば自然とチャリ系統が変わった。平地型だと誰もが思ってたけど、・・・ある先輩が曲がり型だと気づいたんだ」
渡部「・・・。ある先輩。九毛中のか?部の先輩かなんかか」

安部「いやいや、九毛中時代の先輩だけど部じゃないよ。俺たちは部じゃない。同好会レベル、いやそれ以下の集まりだったんだ」
渡部「え?てっきり九毛中でチャリ部だったんだと思った・・・」

     シャアアアアア!! カチッ・・
内装3段変速の2MRのギアが3へ・・
フルスピードへ突入する。
芝田「はぁはぁ・・ハア!!」
岸「・・はあ」
岸には近づいているもののなかなか追いつけない。
その理由の一つにチャリの違いがある。プロフェッサー96の力である。
芝田「はぁ・・はぁ・・!!」

安部「俺たちは麻田先輩っていう偉大な人についていっていただけだ。麻田先輩はホントに凄い人だった・・・。チャリ系統は平地型で、もうトップクラスの平地型だった。みんなでよく一緒に走ったりしたよ」
渡部「へえ・・」
安部「まぁそのせいもあってか6人中4人がその時平地型になったよ」
渡部「(6人・・・?)」

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第五十二話  真っ向!!

なんやかんや言ってるうちに岸と芝田は坂をのり越えていき、そのままストレートを走りぬき2周目に突入していた。
岸と芝田の差はわずか10m程度。
少しでもアタックすれば届く範囲。しかしこの間隔を岸は保っていく。
芝田「(・・・前に出させてくれる気配はないな。このままゴールまで保つ作戦か)」
岸「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・」
芝田「(ってことは俺がアタックする度それに応えてペースを上げてくるなら、体力を削り放題じゃないか。相手の岸もわかってるはずだ、今日の暑さは通常よりも大幅に体力を削る。・・・ぶっ倒れるぐらいに体力を削ってやる。こんな膠着した状態を保ってたら相手の思う壺だからな)」
芝田は何度もアタックを仕掛けていく!!
岸は逃げる!!
岸「(何度でもこいやあ・・・!競り勝って最後に倒れるのはお前だ・・・!!)」
      シャアアアアアアアア!!

川見「両者一歩も譲らずだな」
設楽「まだ3周目ちゃうぞ、あんなん2周目のうちにぶっ倒れてまうで」
川見「どっちが先に倒れるかの我慢比べってとこか」

芝田「はあ!!はあ!!はあ!!はあ!!」
岸「はあ・・・!!はあ!!」
これぞチャリのレース。
原始的な闘い!!体力の削りあい!!
全力疾走の真っ向勝負!!
芝田「はあ・・!!はあ・・!!」
岸「はあ・・!!はああ!!」

激突する二人の闘志。止まらない二人の疾走は坂上りにも続いた。
坂を上りきると下りを全力!!
下りをすぎて平地に戻ったところで岸が立ちこぎに入った。
そこまでやるかと誰もが思ったところで二人はラストの3周目に突入した。

坂井「すげえマジだ」
安部「大丈夫かよ、あんなペース続くとは思えねえ」
鈴木「でも喰らいついてる・・!望みはある・・!」
渡部「(がんばれ芝田・・!俺につなげてくれえ!!)」

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第五十三話  インコース!!

3周目。
平地型の岸はこういったスプリント勝負に慣れていた。芝田は平地型とは違う。決定的に違う点をあげるとするならばそれは回転数の違い。
芝田を平地型と呼ぶなら、その脚の回転数は残念なことに乏しい。ストレートで抜くには岸よりも回転数が上でないといけない。これが絶対条件。
平地のコース・大賀庭園。澤西サイドにとっては地元コースであるが、そんなことは関係ない。
今澤西サイドが有利になる唯一の点は、接近戦であるというだけ、
“曲がり型”芝田の真骨頂が今この3周目で出ようとしていた。
      シャアアアアア!!
岸「はあ!はあ!!」
芝田「・・はあはあ!」
第二のゾーン・ワインドゾーン。左へ曲がりはじめる。そこで芝田が仕掛ける。
芝田「・・!!」
2MRを極限にインサイドへ!
岸「・・!!」
そして体を斜めかせていき強引に旋回力をつける!!岸のプロフェッサーと路肩の僅かな隙間に芝田が2MRの車輪をそこへ突っ込ませた!!
岸「(は・?どこ走ってんだ!!)」
常人なら車輪が路肩の段差にこすりあたり自転車のバランスを崩す。しかし芝田は決してバランスを崩すことなく究極のインコースを走り切る!
芝田「(いッ・・けえ!)」
インサイドをつけたおかげで岸のプロフェッサーを抜く!!

接近戦であったことから芝田のパッシングは成功した。ストレートのスピードでは勝てない。ならば曲がりで、という発想だ。
通常曲がりで相手を抜くとなるとアウトコースから抜くのが普通。何故なら当然相手がインコースをずっと走るからだ。
そういったことから芝田の曲がり型というのは他の人には出来ない“インコースをつく”ことが出来るというアドバンテージへとつながる。
これが芝田の曲がり型の特権の一つである。

岸「はア・・はア!!(抜かされた、こんなとこで・・・でも終わったわけじゃねえぜ・・まだゴールは先だあ・・)」

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第五十四話  最後に力尽きたのは

岸「(1年年下のヤツに負けてられっか!)」
芝田逃げる!!
岸「うおおああ!!」
岸猛攻!!
芝田・岸全力の立ち漕ぎ!!
汗が体中があふれ出てくる!!
暑い!!暑い!!
芝田「(暑い!!苦しい!!でも倒れない!!止まらねえ!!ゴールを過ぎるまでは・・!!)」
岸「おおああああ!!」
芝田「ああああああ!!」
     シャァァアアアアア!!
芝田「はあ!!はああ!!はあ!!」
スプリント勝負のファイナルバトル!!
ぐいぐいと岸が芝田に並びかかっていた!!
芝田「うりゃあああ!!」
負けずと芝田が反撃するが岸のスピードは上がっていく!!
この勝負、岸に軍配が上がったか・・!!
と思いきや、ここで坂!!心臓破り!!!
芝田「ハア!!ハア!!ハア!!」
       シャアアアアアアア!!
岸「うおおりゃあ!!」
岸が下りで抜き返した!!
芝田「・・・!!」
だがしかし・・!!
岸「・・・!!」
上り坂途中でついにその岸の闘いの灯火が消えた。
岸「ぐ・・」
もう脚が・・・!!
岸はそこで自転車を漕ぐのをやめた。
芝田「・・!!」
芝田上り坂を越え、ゴールイン!!岸が最後の最後に戦線離脱・・!!
澤西見事に中堅戦勝利!!

芝田「うっしゃああ!!」
鈴木「どぅ・・・わああああい!!」
坂井「やったああ!!」
岩木「・・ぐう、マジか・・」
岸は自転車をひいてゴールインした。坂の途中でチャリから降りた瞬間に岸の負けは決定していた。
芝田「(よかった・・・。最後の最後に力尽きてくれなかったら負けていた・・・)」

渡部「よし・・・、じゃあ俺か」
霜月「・・・・」
安部「渡部頑張れ、霜月はあぁ見えても強いほうだ。一応白河より一つの上の実力者だからな」
坂井「ナンバーツーだね」
渡部「そうなのか・・、まぁ頑張るよ」


澤西vs一里ヶ浜。
いよいよ大将戦:渡部vs霜月卓也!!!

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第五十五話  渡部vs霜月卓也

準備体操をする渡部。
そしてスタート位置へならぶ。
渡部「奥山のときは転んで終わったけど、今日はそうはいかないよ」
霜月「ハハハ、あん時は凄かったな、望むとこだ」
渡部「・・・・」

坂井「5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・」
        GO!!!!
大将戦開始!!
岩木「霜月いっけええ!!」
岸「・・・(まだ1年の霜月だけど、今年入部した1年の中では断トツの1番。だからまぁこうやって俺らと一緒に練習試合に来て大将任されてるわけだけど。霜月は平地コースだと負けない)」
      シャアアアアアアアア!!!
岸「(こんな澤西のヤツには負けるはずがない。霜月は絶対に10月の大会で旋風をおこす)」
スタートした二人!!ここで渡部の・・・
爆裂加速!!!!
        ドワア・・・!!
渡部のブラックホースが飛び出す!!
岸「・・!!??な、なんだアイツは・・!!」
岩木「今の加速・・・・尋常じゃねえ・・!!」
坂井「渡部は湘南のシャイニングスターだ。今年の10月の大会で旋風をおこす男だ・・!」
岸「あ、あんなヤツが澤西にいたとは・・・」

前に出た渡部!!
渡部「(まだまだ短い練習期間だけど、奥山のときよりは速くなってる自信はある!!・・絶対勝つ!!)」
霜月「・・・(凄い。この加速、奥山のときと一緒だ)」
チャリを漕ぐ二人・・
霜月「(スタートであったときわかったけど、前のときと眼が違う。あれはチャリに本気になった眼だ・・・。面白い。ここが平地である以上負けてらんねえ・・・!)」


川見「大将戦だ」
設楽「なんや今の、一里の霜月はわかんねんけど、あの澤西の大将誰や」
川見「わかんねえよ」
設楽「いい加速やったな、あんなん澤西おらんかったぞ。この大将戦おもろそうや」

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第五十六話  霜月ショー[前編]

前に出た渡部!!
渡部「・・・!!」
爆裂加速の時間は前より縮んでいた。それ故トップスピード維持の時間は延びていた。
しかしソレに負けじと霜月が続く。
霜月の平地型は若干白河の平地型に近い。渡部とは違いスピードで競うよりも持久力で競うほうを好むタイプなのだ。
霜月「はぁ・・はぁ・・はぁ」
トップスピードでいうと白河と霜月は全く同じ速さであろう。白河と霜月の序列を決定させた要因をスピードでないとすると、なんなのか。
その要因は次なる第二のワインドゾーンで明らかとなる。
渡部「ハァハァハァ・・・!!」

ストレートを駆け抜ける渡部・霜月!!
15mほどの間隔が開いている。
渡部「はぁ・・!!」
そしてここから左へ曲がっていく第二のゾーンへ!!
渡部「・・・!!」

設楽「・・霜月必死やったなあ」
川見「あんな加速をスタートからやらされたら一瞬あせんだろ。しかしまぁあのスピードで体力もつのかよ」
設楽「このコースは大会のようなロングコースとはちゃうからな、ある程度のスピードで走りきるのは容易なこっちゃ。・・そんなことよりもこのコースの特徴に気がつきはったか?」
川見「ん?特徴?」
設楽「せや。おもろいでえ、霜月にしか出来んことがこのコースにはあんねや」
川見「・・・?」

インコースを攻めていく渡部!!
渡部「ハァ・・・ハァ・・・!!」
スピードを出した状態故アウトサイドから抜くことは不可。
霜月「・・・・」

大将戦一周目。左コーナーに差し掛かった瞬間。
霜月が仕掛けた!!

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第五十七話  霜月ショー[後編]

設楽「・・要するに霜月のお得意の“ジャンピング”や」
川見「ジャンピング?・・一体何処でジャンピングするってんだ」

霜月「・・・!!」
渡部「・・・!!」
霜月「(うおらッ・・!!)」
霜月ジャンピング!!マウンテンバイクに装着されているサスペンションを利用し軽々と宙へ跳ぶ!!
渡部「(は・・?)」
跳んだ先にあるのは・・車道の隣にある“歩行者用道路”!!
渡部「(なんだソリャ!!奥山のときと同じでジャンプしやがったなあ・・!ずっりい!)」
左サイドの歩行者通路に移った霜月は当然渡部よりもインコースを攻めることが出来る!!
しかも防御不可の霜月の絶対領域!!
      シャアアアアアアアアア!!
霜月が渡部を抜かす!!
霜月「はっはあ!!抜っきい~!」
渡部「くう・・!!ずっりい!!」

設楽「歩行者道路や、このコースの両脇にあるやろ」
川見「・・ん、なるほど。あのチャリについてるサスペンションを使えば歩行者道路に移るために段差をのり越えるのも可能だな。そしたらそうか、完璧なインコースをつくことが出来るな」
設楽「せや、霜月はサスペンションで出来ることはすべてやる男やからな、普通のヤツならあんな段差のり越えれへんからな。先鋒戦中堅戦で歩行者道路が使われんかったんはそういうワケや。まぁ・・澤西サイドはインというアドバンテージをとれなくなるっちゅうこっちゃ」

       シャアアアアアアア!!!
渡部「ハァ・・!!ハァ・・!!」
霜月「(インはいただいた・・!!このままぶっち切るかあ・・!!)」
渡部「ハァ・・!!(コーナーで抜くのはきつそうだ・・、ならばスタートのとことゴールのとこのストレートで頑張るしかねえ・・!!反則だっつうのジャンピング・・、ゼッテー抜いてやる!!)」

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第五十八話  百戦錬磨

二人は激走する!
同じコースでありながらも走る場所は異なる!
ある意味芝田のインコースを凌駕する点をみて曲がり型といってもいいのだろう。しかし霜月はなんといっても平地型。
       シャアアアアアアア!
ストレートゾーンでの加速!
渡部「ハァ!!ハァ・・!!」
霜月のそれは渡部に絶望を与えるものだった。
渡部「(速い・・!!)」
霜月「はあはあ!!はああ!!」
頑張ったところで互角!!
渡部は自転車レースを始めて以来このような体験をあまりしてこなかった。平地という条件下で全力を出しても追いつけないという状況!!
渡部「ハア!!ハア」
絶対的自信が渡部の心のどこかにあった。平地ならいけると。
渡部「(く、このままじゃ駄目だ・・。もっともっと速く・・!こんなところで負けてたら大会でも通用しない・・!なんとかして前を取り返す!!)」
渡部は全力疾走する最中、脳裏で自分の子ども時代を思い出していた。

渡部光星7歳
人生初の自転車漕ぎは渡部の世界を一転させた。
自転車に乗っては何も行き先を考えずただただ遠い場所へと自転車を走らせていた。毎度毎度遠出はするが迷子にはならなかった。帰り道は自分の記憶をたどり門限に間に合うよう自転車を走らせていた。
渡部は思った。決められた時間の中でもっと遠くへ行くには速く自転車を走らせるしかない。
渡部このときすでに自転車レース界に足を踏み入れていたのかもしれない。
渡部光星中学時代・・。たどり着いた場所は九毛沼海岸線であった。一直線で障害物もなく完全に平地。
一般のロードレーサーとの怠慢勝負。
渡部はこの時“湘南のシャイニングスター”をよばれ始めた。


渡部「(そうだ、あの頃は誰も俺についてこれるヤツはいなかったんだ・・、どんな相手でもどんな状況でも・・俺は百戦錬磨だったんだ!!今だってそうだ!!こんなところで負けてられっかよ!!)」

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第五十九話  “スピード”!!

渡部光星中2の夏休み
渡部は公道レースに熱中していた。
九毛沼海岸線にいると次々と勝負を仕掛けられた。
この日も渡部は負けなかった。渡部は暗くなるとすぐに帰る習慣をつけているので暗くなったところで渡部は帰る支度をする。そしていざ帰ろうとしたその時、一人の男が話しかけてきた。
この男との出会いこそ渡部にとって後々貴重な出会いとなる。
渡部「なんですか?勝負ですか?」
麻田「あぁそうだ。よろしく頼むよ」
麻田翔一:当時九毛沼中3年!!
渡部「じゃあやりますか(先輩の人だな。さっさと勝ってそのまま帰るか・・)」
麻田「・・・」
その日の勝負は語るまでもない。
渡部の置き去り負け。
渡部「負けた・・」
麻田「いい走りだが、まだまだだな」
渡部「・・・」
麻田「もっとスピードが必要だな、君には」
渡部「スピード・・」
麻田「平地でやりあうのが好きなんだろ?だったらスピードが必要だ。平地で一番必要なものは“スピード”だ!一番のトップスピードを出せれば、君はもうここで負けることはないよ」
渡部「(スピードかぁ・・)」
麻田はその場を静かに去った。
渡部はその場に残り勝負の余韻に浸っていた。次元の違う麻田のスピードには気づけなかったが、とにかく速い印象のみ残った。

“スピード”!!
渡部「はあ!はあ!」
霜月を先頭に坂をクリアしストレートへ
ゴール位置手前のストレートでやっと戦況を確認できた芝田たち
芝田「霜月歩行者のトコにいやがる」
坂井「これは永続インコースってことか」
岩木「いいぞ霜月!」


霜月「はあ!はあ!!」
2周目
渡部「ハァ!ハァ!!」

川見「おっと、ホントに歩行者用走ってるぞ。後ろの澤西には厳しいな」
設楽「せやな、しかしこの1周目なんかペース速ない思わんか?」
川見「確かに言われてみれば」
設楽「この2周目、ペースダウンかペース維持の運命の選択やでぇ」

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第六十話  勝ちへのこだわり

川見「・・なるほどな、このままペースを維持していけば体力はかなり削り取られる。しかしソレを恐れてペースダウンを選択すると、相手に抜かされるか置いていかれる状況となってしまう。これはどっちかというと前を走る一里サイドの選択が勝負の鍵をにぎるな」
設楽「せやな、一里霜月がペースダウンを選択すれば澤西はその瞬間チャンスになんねんからな」
      シャアアアアアアアアア!!
渡部「ハァ・・!ハァ・・・!!」
暑い・・!苦しい・・!
霜月「(一周目でかなりとばしたせいか、けっこう疲れてきたな、この2周目は体力を温存するか)」
霜月が後ろの渡部を見る。
霜月「(渡部も疲れてるな、きっと・・・。3周目になったところで一気にいくか・・・)」
全身の疲れを癒すかのように霜月はペースを落とした。
渡部「・・・!」
渡部はそれを確認。
普通ならアタックして前に出てしまえばいいと考えるが、この時渡部にはある追い抜きのこだわりが出来てしまっていた。
どうしてもスピードの真っ向勝負で追い抜きたい!
渡部「ハァ・・ハァ・・ハァ・・!」
汗だくの苦し紛れの渡部の内部では何かが爆発して燃え滾っていた。それは今までの平地型として勝ち続けていたプライドか、それとも単純に純粋な平地型としてプライドか!!
渡部「ハァ・・!!」

渡部は霜月のペースダウンにあわせてペースを落とした。
霜月「・・・(ほぉ)」
霜月の後ろに渡部は構える・・!!
霜月「(いいね、全力で抜くってか・・、意外と熱いね)」
      シャアアアアアアアア!!!
渡部「ハァ・・・!ハァ・・・!」

渡部「(なにかわかんねえけど、どうしてもスピードで勝ちたいんだ・・・!霜月には、どうしても・・スピードで勝ちたいんだ・・・!!)」

霜月「・・・・」



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